今日のAIニュース5選|Waymo東京無人タクシー、Salesforce Koa、Dimensity 9600 Pro【2026年9月16日】

今日のAIニュース5選

AIが社会へ広がる形が、かなり具体的になってきました。

東京では、Waymo、GO、日本交通が2027年中の完全無人タクシー商用化を目指すことで正式に合意しました。企業向けでは、SalesforceがCRM業務に特化した推論モデル「Koa」を発表し、汎用モデルだけに頼らず、仕事の種類に合わせてAIそのものを専門化する動きが進んでいます。

スマートフォンでは、MediaTekが2nmプロセスを採用した「Dimensity 9600 Pro」を発表しました。大規模なAI処理をクラウドへ送るだけでなく、端末側で実行するための性能と省電力性を高めています。

医療研究では、OpenAI FoundationがUNC Lineberger Comprehensive Cancer Centerへ4000万ドルを提供し、個別化がんワクチンの設計に役立つデータ基盤を作る研究を支援します。一方、EUでは15歳未満によるAIチャットボットなどの利用を制限する「EU Kids Act」の草案が報じられ、AIが日常へ入り込むほど利用ルールも具体化しています。

今日はこの5本から、AIが「何でも答える汎用チャット」から、移動、営業、スマホ、医療といった用途へ組み込まれ、その社会実装に合わせて安全性や規制も整えられていく流れを見ていきます。

1. Waymo×GO×日本交通、2027年に東京で完全無人タクシー商用化へ

GO、Waymo、日本交通は9月15日、東京における自動運転タクシーの商用化へ向けた戦略的パートナーシップに合意したと発表しました。

3社が目指すのは、2027年中に東京で自動運転レベル4による完全無人の商用タクシーを運行することです。実現すれば、国内初の完全無人タクシー商用運行になるとしています。

3社は2025年から東京都内7区で公道試験を行ってきました。現在は日本交通の乗務員が同乗した状態でWaymoの自動運転システムを東京の道路へ適応させる試験を続けており、その実績を踏まえて一般利用者へ提供する次の段階へ進みます。

計画では、運行開始後に段階的に約100台まで拡大します。利用者はタクシーアプリ「GO」とWaymoアプリの両方から配車できる予定です。GOでは従来の有人タクシーとWaymoの自動運転タクシーを同じアプリから呼べる形を想定しています。

役割も分かれています。Waymoが自動運転技術や車両管理システムを提供し、日本交通が東京での運行管理や営業所運営を担い、GOが既存のタクシー事業者との連携や配車サービスを担当します。

ただし、2027年という時期は確定したサービス開始日ではありません。国や自治体から必要な許認可を取得し、安全性と共同運用の検証を完了することが条件です。

Xでも発表直後から、「東京の複雑な道路でどう動くのか」「一度乗ってみたい」「既存のタクシー業界と組む形が興味深い」といった反応が目立ちました。

自動運転の競争は、AIの運転性能だけでは成立しません。配車アプリ、運行管理、車両整備、許認可、地域の交通事業者までつながって初めて商用サービスになります。東京での取り組みは、フィジカルAIが実証実験から日常の交通インフラへ移る大きな一歩になりそうです。

2. Salesforce「Koa」発表 CRM業務に特化した推論モデルをNVIDIAと開発

Salesforceは9月15日、Agentforce向けの新しい推論モデル「Koa」を発表しました。

KoaはSalesforce初のCRM向け推論モデルで、NVIDIAのオープンウェイトモデル「Nemotron」を基盤に開発されています。営業、顧客対応、マーケティングなど、Salesforce上でAIエージェントが行う複数段階の仕事を処理することを目的にしています。

特徴は、一般的な知識を広く持つ汎用モデルではなく、CRM業務へ特化して追加学習していることです。Salesforceは、過去27年のCRM導入で得た業務知識をもとに、14以上の業界について営業案件の処理や問い合わせ対応などを再現した合成データを作り、Koaの学習に使ったと説明しています。

実際の顧客データを学習には使用していません。KoaのモデルウェイトはSalesforceが管理し、学習から推論までSalesforceのインフラ内で動かすことで、顧客データを同社の管理境界の外へ出さない設計です。

Salesforceの自社評価では、現在の標準的な汎用モデルと比べて、適切なアクションを選ぶ精度が11%向上し、顧客の文脈を正しく呼び戻す信頼性が2.1倍、長い会話で文脈を保持する性能が15%向上したとしています。ただし、これらはSalesforce自身の評価であり、あらゆる用途で同じ差が出ることを示す独立した第三者評価ではありません。

KoaはSalesforce社内ですでに使われており、現在は複数企業との顧客パイロットへ進んでいます。Salesforceは米国地域で2026年冬の一般提供を予定しています。

AIモデルの競争では、これまで「最も高性能な汎用モデル」が注目されてきました。しかし企業で使う場合、必要なのは常に世界最高の総合性能とは限りません。自社の業務を理解し、必要なツールを正しく選び、データ管理条件を守りながら、低いコストで安定して働くことの方が重要な場面もあります。

Koaは、企業向けAIが「一つの巨大モデルを何にでも使う」形から、「仕事に合わせて専門モデルを選ぶ」形へ進んでいる例です。

3. MediaTek「Dimensity 9600 Pro」発表 2nmでスマホ上のエージェントAIを強化

MediaTekは9月15日、フラッグシップスマートフォン向けSoC「Dimensity 9600 Pro」を発表しました。

同社のスマートフォン向けチップとして初めてTSMCの2nmプロセスを採用し、CPUやGPUだけでなく、端末上でAIを動かすためのNPUを大きく強化しています。

Dimensity 9600 Proは2種類のNPUを組み合わせた構成で、「Agentic AI Engine」を搭載します。MediaTekによると、前世代と比べてLLMが回答を生成する前に入力を処理する性能が51%向上し、1ワットあたりのトークン生成性能は55%向上しました。常時動作するAI向けのNPUでは消費電力を40%削減したとしています。

最大300億パラメータ規模のモデルを端末上で扱えるとしており、スマートフォン内の情報を分析して先回りした支援を行うAIや、利用者の好みに合わせて動くパーソナルAIなどを想定しています。

CPU側でも、MediaTekはマルチコア処理時の消費電力を最大61%削減したと説明しています。AIを常時動かすスマートフォンでは、性能だけ高くてもバッテリー消費が大きすぎれば実用にならないため、省電力性は重要な条件です。

最初のDimensity 9600 Pro搭載スマートフォンは今四半期中に登場する予定で、OPPOはFind X10 Pro Maxを搭載機の一つとして世界展開すると発表しています。

生成AIはこれまで、スマートフォンからクラウド上の巨大モデルへ通信して使う形が中心でした。端末側でより大きなモデルを動かせるようになると、通信が不安定な場所でも使いやすくなり、個人データをクラウドへ送らず処理できる範囲も広がります。

スマホのAI競争も、「AI機能を搭載しているか」から、「どこまで端末の中だけで考え、動けるか」へ変わり始めています。

4. OpenAI Foundation、個別化がんワクチン研究へ4000万ドル AI用の公開データ基盤を整備

UNC Lineberger Comprehensive Cancer Centerは9月15日、OpenAI Foundationから4000万ドルの支援を受け、個別化がんワクチンの研究に必要なデータを作るプロジェクトを進めると発表しました。

個別化がんワクチンは、患者ごとに異なるがん細胞の特徴を調べ、免疫系が攻撃すべき目印を選んでワクチンを設計します。しかし、どの腫瘍抗原を標的にすれば強い免疫反応を得られるのかを判断するには、質の高い生物学データが大量に必要です。

今回の研究では、3つのバイオバンクから集めた匿名化済みの腫瘍組織や免疫細胞を分析し、より有効な標的を選ぶAI手法の学習データを作ります。並行して、トリプルネガティブ乳がんを対象に複数のワクチン構成を比較し、どの方法が腫瘍に対する免疫反応を強めやすいかも調べます。

OpenAI Foundationは今回の発表に合わせて、生命科学分野の第2の科学プログラム「Public Data for Health」を開始します。研究機関ごとに閉じたデータを増やすのではなく、適切に公開できる高品質な科学データを整え、世界の研究者やAIが再利用できるようにする考えです。

ここでAIが直接「がんを治す」と発表されたわけではありません。まず必要なのは、AIが正しく学習し、研究者が比較・検証できるデータを増やすことです。今回の4000万ドルは、その土台作りへの投資です。

AIを科学研究へ使う動きでは、モデル性能だけでなく、何を学習させるかが成果を大きく左右します。医療AIの競争が、モデル開発から科学データそのものの整備へ広がっていることが分かります。

5. EU、15歳未満のAIチャットボット利用を制限する「EU Kids Act」を準備と報道

EUが、15歳未満の子どもによるAIチャットボットやSNS、動画共有サービス、オンラインゲームへのアクセスを大きく制限する法案を準備していると、ロイターがEU欧州委員会の文書をもとに報じました。

法案は「EU Kids Act」と呼ばれ、欧州委員会が9月17日に正式発表する予定とされています。現時点では正式に成立した規則ではなく、草案の内容は発表までに変わる可能性があります。

ロイターが確認した草案では、15歳以上は自分のアカウントを作成できる一方、13〜14歳は保護者の管理下で制限付きアカウントを使う形が想定されています。3〜12歳は保護者が完全に管理する子ども向けサービスだけを利用し、3歳未満は対象サービスへアクセスできない案です。

AIチャットボットもSNSと並んで対象に入っている点が重要です。子どもが日常的にAIへ相談したり、長時間会話したりする利用が増える中で、年齢確認や保護者による管理をサービス側へ求める方向が示されています。

草案には、中毒性のある設計や有害なフィードを避けること、子どもが問題を簡単に通報できる仕組み、保護者向けの管理機能、年齢確認なども盛り込まれています。

ただし、欧州委員会が提案した後も、EU加盟国や欧州議会との協議が必要です。今回報じられた内容がそのまま法律になるわけではありません。

前日のAIニュースでは、最先端AIの開発速度と安全性をどう両立するかという業界側の議論を取り上げました。EU Kids Actはそこからさらに利用者側へ踏み込み、「誰が、何歳から、どの条件でAIを使えるのか」を制度として決めようとする動きです。

AIが学校、家庭、スマートフォンへ広がるほど、モデルの中身だけでなく、利用年齢やアクセス方法そのものが規制の対象になっていきそうです。

まとめ

今日の5本を見ると、AIが「汎用モデルを作る競争」から、「用途ごとに社会へ実装する競争」へ進んでいることが分かります。

Waymo、GO、日本交通は、自動運転AIを東京のタクシー運行へ組み込み、2027年の完全無人商用サービスを目指します。SalesforceはCRMに特化したKoaを作り、企業の仕事に合わせてAIモデル自体を専門化しました。

MediaTekはDimensity 9600 Proで、より大きなAIをスマートフォン上で動かすための性能と省電力性を高めています。OpenAI FoundationとUNCは、AIによるがんワクチン研究を進めるため、その前提となる科学データを増やそうとしています。

一方で、AIが生活へ深く入るほど、使い方を決めるルールも必要になります。EUでは、AIチャットボットを含むデジタルサービスについて、子どもの年齢に応じてアクセスを制限する新しい法案が準備されています。

共通しているのは、AIが一つのチャット画面だけで使われる技術ではなくなっていることです。車、企業システム、スマートフォン、医療研究へ組み込まれれば、それぞれの現場に合った性能、データ、安全性、運用ルールが必要になります。

次のAI競争では、「一番賢いモデル」を作るだけでなく、「その場所で本当に使えるAIへ作り替えられるか」が大きな差になりそうです。

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